相続・遺言
2026年3月1日
更新: 2026年5月24日

遺言書の書き方と法務局保管制度|自筆証書を確実に残す全手順|費用3,900円

遺言書の書き方と法務局保管制度|自筆証書を確実に残す全手順|費用3,900円

遺言書の書き方を法務局保管制度とセットで完全解説。自筆証書遺言の形式要件・書き間違いNG例・申請の5ステップ・公正証書との比較。司法書士監修で「無効にならない遺言書」をサポート。

この記事のポイント

  • 自筆証書遺言を法務局で保管できる制度(2020年7月開始)。費用わずか3,900円
  • 3大メリット: 検認不要・改ざん不可・全国どこでも閲覧可
  • 形式要件: 全文自書・日付・氏名自書・押印(財産目録のみPC可)
  • シンプルな相続なら法務局保管、複雑な相続なら公正証書遺言
  • 法務局は形式チェックのみ、内容の有効性は審査しない → 司法書士相談推奨

「遺言書を書きたいけれど、書き方が間違っていると無効になると聞いて怖い」「自宅保管は不安、法務局に預ける制度があるらしい」──そんな方のための完全ガイドです。

この記事では、司法書士のノブ先生終活カウンセラーのあゆ先生に、52歳の読者が相談する形で、遺言書の書き方と法務局保管制度の使い方を解説します。

法務局の入口イメージ。遺言書保管制度の手続きへ
2020年7月開始の遺言書保管制度。費用3,900円で法務局が原本管理
この記事の登場人物
  • 読者さん
    読者さん(52歳)
    遺言書を書きたい娘
  • ノブ先生
    ノブ先生
    司法書士
  • あゆ先生
    あゆ先生
    終活カウンセラー

第1章|遺言書保管制度とは?従来との違い

遺言書保管制度は、自筆証書遺言(自分で書いた遺言書)を法務局(遺言書保管所)が保管してくれる公的サービス。2020年7月から開始されました。

従来、自筆証書遺言は自宅や貸金庫に保管するしかなく、「死後に見つからない」「相続人に隠滅・改ざんされる」リスクがありました。この制度はそれを根本的に解決します。

従来(自宅保管)法務局保管制度
紛失リスクなし
改ざんリスクなし
家庭裁判所の検認必要(1-2ヶ月)不要
相続人の発見偶然依存全国どこの法務局でも閲覧可
費用0円3,900円(一度きり)
読者さん
読者さん

3,900円で法務局が保管してくれるって、安すぎませんか?逆に「公正証書遺言」と何が違うんですか?

ノブ先生
ノブ先生

いい質問です。違いは「内容のチェック」にあります。法務局保管制度は形式チェックのみ(日付・署名・押印)で内容は審査しません。公正証書遺言は公証人が内容まで確認します。

つまり「シンプルな財産で確実に残したい」なら法務局保管、「複雑な相続で確実に有効にしたい」なら公正証書遺言。費用は前者3,900円、後者3〜10万円が目安です。

第2章|自筆証書 vs 公正証書|どちらを選ぶ?

比較項目自筆証書+法務局保管公正証書遺言
費用3,900円3〜10万円(財産額による)
作成方法自分で手書き公証人と相談して作成
検認不要不要
内容チェック形式のみ公証人が内容も確認
証人不要2名必要
無効リスク形式不備の可能性ありほぼなし
修正都度書き直し→再申請公証役場で修正可

選び方の早見表

  • 法務局保管がおすすめ: 財産がシンプル(預貯金・保険のみ)/配偶者と子に法定割合で分けるだけ/費用を抑えたい
  • 公正証書遺言がおすすめ: 不動産が複数ある/事業承継がある/再婚で前妻の子がいる/法定割合と違う分け方をしたい

第3章|自筆証書遺言の形式要件|無効にしないための鉄則

自筆証書遺言と印鑑、便箋のイメージ
形式要件を1つでも欠くと遺言は無効に

自筆証書遺言には民法第968条で厳格な形式要件が定められています。これを満たさないと、せっかく書いた遺言が無効になります。

必須5要件

  1. 全文を自書する(パソコン・代筆は不可。財産目録のみPC可)
  2. 日付を具体的に記載(「○年○月○日」。「吉日」「○月某日」は無効)
  3. 氏名を自書(戸籍通りの本名)
  4. 押印する(認印可だが実印推奨)
  5. A4サイズ・片面のみ(法務局保管の場合)

無効になる「ありがちNG例」

NG例理由
「令和○年吉日」日付が特定できない → 無効
ワープロで全文作成自書要件違反 → 無効
氏名がペンネーム本人特定不可 → 無効
押印忘れ押印要件違反 → 無効
夫婦連名の遺言共同遺言は禁止(民法975条) → 無効
「○○に全部あげる」抽象的すぎて執行不能の可能性
2019年の法改正で「財産目録」だけはPC可に
本文は自書必須ですが、別紙の「財産目録」(不動産一覧・預金一覧など)はPC作成可。ただし各ページに署名と押印が必要です。
読者さん
読者さん

「妻に全部相続させる」って書きたいんですが、それだけだとダメなんですか?子どもが2人いるんですけど。

ノブ先生
ノブ先生

書くこと自体はOKですが、お子さんには「遺留分」という最低保証分(法定相続分の1/2)があります。「妻に全部」と書いてもお子さんが遺留分侵害額請求をすれば、妻が金銭を支払う必要が出ます。

「妻に全部」と本気で書きたい場合は、必ず「子に遺留分相当の現金を別途用意」するか、生前に子と話し合って同意を得ておくことが重要です。詳しくは遺留分侵害額請求を参照してください。

第4章|法務局保管申請の5ステップ

  1. 1
    遺言書を自書で作成

    A4片面・無封・財産目録はPC可

  2. 2
    保管する法務局を選ぶ

    住所地・本籍地・不動産所在地のいずれかの法務局(遺言書保管所)

  3. 3
    予約を取る

    法務局のWebサイトまたは電話で。当日訪問は不可

  4. 4
    必要書類を持参して窓口へ

    本人のみ申請可(代理人不可)

  5. 5
    審査・受付後、保管証を受け取る

    保管証は再発行不可。大切に保管

当日の持ち物リスト

  • 自書した遺言書(封入不要・A4推奨)
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付き)
  • 住民票の写し(作成後3ヶ月以内のもの)
  • 申請書(法務局窓口または公式サイトで入手)
  • 手数料3,900円(収入印紙で納付)

第5章|費用一覧

手続き費用備考
保管申請3,900円収入印紙で納付・1通につき
閲覧(モニター)1,400円本人のみ申請可
遺言書情報証明書の交付1,400円相続人等が申請可
保管撤回無料本人のみ・遺言書返却
変更届(住所等)無料本人のみ

第6章|制度を使うべきケース/使わなくていいケース

○ 利用が特に有効なケース

  • 一人暮らし・単身世帯で発見されにくい環境
  • 相続人が遠方に住んでいる・または関係が複雑
  • 財産が多く、遺言内容を確実に届けたい
  • 遺言書の内容が固まっていて変更可能性が低い
  • 家族裁判所の検認手続き」を相続人に負担させたくない

× 使わない方がいいケース

  • 不動産が複数・事業承継など複雑な相続(公正証書を推奨)
  • 遺言内容が変わる可能性が高い(書き直すたびに3,900円+手間)
  • 家族関係が複雑(再婚で前妻の子等)→ 公正証書推奨
読者さん
読者さん

母(78歳)に「法務局に遺言書預けたら?」って提案したら、「死ぬ準備みたいで縁起悪い」って嫌がられました……。

あゆ先生
あゆ先生

すごくよくあるパターンです。「遺言書」という単語自体が重いので、言い換えてみてください。

3,900円で家族が後で困らない手配」「お父さんの分も書いて法務局にしまっておこう」のように手続きとして伝える。死を想起させない言葉に変えると、親世代の心理的ハードルが下がります。詳しい切り出し方は親に終活の話を切り出す方法を参照。

第7章|制度の限界と注意点

注意①:法務局は内容の有効性を審査しない
形式(日付・署名・押印)はチェックしても、「財産の特定」「分配の論理」までは見ません。「無効になりそうな内容」のまま保管されるリスクがあります。重要な遺言は司法書士・弁護士に内容相談を推奨。
注意②:家族に「存在を伝える」必要がある
法務局は本人死亡を自動で把握しません。家族が「相続人照会」しないと発見されないケースが実際にあります。エンディングノートに「法務局に遺言保管中」と必ず記載してください。
注意③:撤回は本人のみ・代理不可
認知症などで本人が法務局に行けなくなると、撤回も内容変更もできません。書いたら定期的に内容を確認し、状況変化があれば早めに書き直しを。

第8章|保管後にやるべき3つのこと

  1. 保管証を安全な場所に保管+信頼できる家族に存在を伝える
  2. エンディングノートに記載:「法務局に遺言書を保管している(保管番号: ○○)」と書く
  3. 1〜2年に一度、内容を見直し。変更が必要なら撤回(無料)→新規申請

遺言を書く前に、まず死生観診断

「誰に何を残すか」はあなたの死生観が決めます。5分の診断で自分のタイプを知ると、遺言の方向性が驚くほどクリアになります。

死生観診断を試す(5分・無料)

まとめ|3,900円で家族の負担を激減させる

遺言書保管制度は、わずか3,900円で「検認不要・改ざん不可・全国閲覧可」を実現する画期的なサービス。シンプルな相続なら、これで十分です。

ただし法務局は内容を審査しません。形式は満たしても内容に問題があると無効リスクが残ります。複雑な相続は公正証書遺言を、内容に不安があれば司法書士相談を組み合わせてください。

そして書いたら、必ずエンディングノートに保管番号を記録し、家族に存在を伝えること。これで「書いたのに見つけられない」を防げます。

よくある質問(FAQ)

Q. 遺言書保管制度を使うと「検認」が不要なのはなぜ?

A. 検認とは家庭裁判所が遺言書の存在・状態を確認する手続き。法務局がすでに原本を管理し改ざんの心配がないため、検認を省略できます。これで相続人の負担が1〜2ヶ月分減ります。

Q. 遺言書を変更したい場合は?

A. 保管中の遺言書を撤回(無料)して、新しい遺言書を改めて申請(3,900円)。変更箇所だけの修正は不可、遺言書全体を作り直し

Q. 法務局窓口に本人が行けない場合は?

A. 保管申請は本人のみ・代理人不可。撤回・閲覧も同様。出向けない場合は法務局保管ではなく公正証書遺言を検討してください(公証人が出張も可能)。

Q. 法務局はどこを選べばいい?

A. 住所地・本籍地・不動産所在地のいずれかの法務局(遺言書保管所)。最寄りの法務局でない場合があるため、事前にWebで「遺言書保管所」一覧を確認してください。

Q. 自筆証書遺言を封筒に入れて持参すべき?

A. 無封のまま持参してください(法務局がスキャンするため)。封入された遺言書は受付不可。A4片面で書き、ホチキス止めもしないでください。

Q. 法務局保管の遺言書は何年保管されますか?

A. 遺言者死亡後50年間原本保管、画像データは150年保管。実質的に「永久保管」と考えてOKです。

Q. 家族に遺言書の内容を知られないように保管できますか?

A. はい。本人が生きている間は本人以外は閲覧不可。死亡後は相続人が「遺言書情報証明書」を請求して内容を知ります。

Q. 法務局保管制度と公正証書遺言、両方作れますか?

A. 法的には可能ですが、新しい日付の遺言が優先されるため、内容矛盾があると混乱します。基本はどちらか一方を選んでください。

遺言書シリーズ

もっと深く知る

遺言書の種類・書き方・無効になる条件・保管制度を網羅

遺言書のトピックページを開く