法律
2026年4月23日
更新: 2026年5月24日

自筆証書遺言が無効になる9つの条件|正しい書き方と法務局保管制度を徹底解説

自筆証書遺言が無効になる9つの条件|正しい書き方と法務局保管制度を徹底解説

手書きで作れる自筆証書遺言は、形式的なミスで無効になるリスクがあります。「PCで書いた」「○月吉日と書いた」「押印がない」など無効になる9つのケースを具体的に解説。2019年法改正のポイントと法務局保管制度の活用方法も詳しく紹介します。

この記事のポイント

  • 自筆証書遺言は「全文自書・日付・氏名の自筆・押印」の4要件を満たさないと無効になる
  • 「○月吉日」「PCで作成した本文」「訂正方法の誤り」などの細かいミスで無効になりやすい
  • 財産目録のみワープロ(PC)作成が可能(2019年1月施行の法改正)
  • 無効リスクを下げるなら法務局保管制度または公正証書遺言の活用が有効

自筆証書遺言の4つの有効要件

自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごんしょ)は、遺言者がすべて自筆で書く遺言書です。費用がかからず手軽に作れる反面、形式的なミスで無効になるリスクがあります。

民法によると、自筆証書遺言が有効であるためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

要件内容注意点
①全文自書遺言の内容(本文)をすべて自筆で書くPCやスタンプは不可。財産目録のみPC可
②日付の記載作成した年月日を自筆で記入する「○月吉日」など特定できない日付は無効
③氏名の自書遺言者の氏名を自筆で署名する通常は戸籍上の氏名が望ましい
④押印署名の後に印鑑を押す認印・拇印でも可(実印が望ましい)
ペンで書類に署名する手のアップ
遺言書は4つの要件を正確に満たすことが重要です

自筆証書遺言が無効になる9つのケース

1. PCで本文を作成した

遺言本文をパソコンで作成した場合は無効です。2019年の法改正により財産目録のみPCでの作成が認められましたが、本文は必ず手書きでなければなりません。財産目録をPC作成した場合は、各ページに署名・押印が必要です。

2. 代筆・口述した

本人以外が代わりに書いた場合(代筆)や、本人が口頭で述べたものを他者が書き留めた場合は無効です。体が不自由な場合は「公正証書遺言」を選択しましょう。

3. 日付が特定できない

「令和6年5月吉日」「2024年初夏」のように、具体的な日付が特定できない記載は無効です。「令和6年5月15日」のように年月日を明記する必要があります。

4. 日付が複数ある・矛盾している

複数の日付が記載されていたり、修正の際に日付の訂正が適切でなかったりすると、いずれの日付が正しいか判断できず無効になる場合があります。

5. 押印がない

署名はあるが押印がない場合は原則として無効です。印鑑の種類は問われませんが(認印・拇印可)、実印を使うことで本人確認の信頼性が高まります。

6. 訂正の方式が正しくない

民法に定められた訂正方法以外で修正した場合は、その訂正部分が無効になります。

正しい訂正方法(民法968条):

  • 訂正箇所を二重線で消す(修正液・修正テープは不可)
  • 欄外に「○行目○字削除、○字加入」と記載する
  • 訂正箇所に押印する
  • 欄外の記載に署名する

訂正が多い場合は書き直すことをおすすめします。

7. 遺言能力がない状態で作成した

重度の認知症など、遺言能力(物事を正しく判断できる能力)が失われた状態で作成した遺言書は無効です。「意思能力がなかった」と主張されると、遺言書が争われる原因になります。判断能力がある今のうちに作成することが重要です。

8. 強迫・詐欺によって作成された

脅迫や騙されて作成した遺言書は、取り消しの対象になります(民法96条)。特に高齢者の場合、同居家族や介護者による不当な影響に注意が必要です。

9. 内容が不明確・特定できない

「全財産を長男に」は有効ですが、「お金を子供たちに」のように対象や割合が不明確な場合は、解釈が分かれて無効・トラブルの原因になります。財産は具体的に特定して記載しましょう。

書類とペンが置かれたデスク
法務局保管制度を活用することで、遺言書の安全性が大幅に高まります

財産目録のPC作成(2019年法改正)

2019年1月13日施行の改正民法により、自筆証書遺言の「財産目録」部分のみPCでの作成が認められました。

  • 財産目録の各ページに署名・押印が必要
  • 本文(前書き・誰に何を相続させるか)は引き続き手書き必須
  • 通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を添付することも可能(各ページに署名・押印)

法務局の保管制度を活用する

2020年7月から、法務局(遺言書保管所)で自筆証書遺言を保管できる「遺言書保管制度」が始まりました。

項目内容
費用1件3,900円(保管申請時)
メリット紛失・偽造・隠蔽を防げる。相続発生後の家庭裁判所による検認が不要
申請方法遺言書保管所に本人が出頭して申請
確認方法遺言者本人が閲覧請求できる

公正証書遺言との比較

無効リスクを完全になくしたい場合は、公正証書遺言の作成を検討しましょう。

項目自筆証書遺言公正証書遺言
費用無料(法務局保管は3,900円)公証人手数料(財産額による、数万円〜)
手間自分で書いて保管公証役場で公証人が作成(証人2人必要)
無効リスク形式ミスで無効になる可能性ありほぼなし(公証人が形式確認)
秘密保持保管場所次第原本は公証役場が保管
検認必要(法務局保管の場合は不要)不要

まとめ:遺言書の無効を防ぐためのチェックリスト

自筆証書遺言を作成した後は、以下のポイントを確認しましょう。

  • ○ 全文を自分の手で書いたか(財産目録はPC可)
  • ○ 年月日を具体的に記載したか(「○月吉日」はNG)
  • ○ 自分の氏名を署名したか
  • ○ 押印したか(認印・実印いずれも可)
  • ○ 財産の内容・対象者が明確に特定されているか
  • ○ 訂正がある場合、民法所定の方式で行ったか
  • ○ 法務局への保管申請を検討したか

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