この記事のポイント
- エンディングノートは遺言書とは別物。法的効力はなくても「家族が困らないための取扱説明書」として最重要
- 必須は10項目(基本情報/資産/デジタル/医療介護/葬儀/メッセージ/ペット など)
- 「全部書こう」とすると挫折する。まず30分で「資産口座+緊急連絡先」だけからでOK
- パスワードは直接書かず「パスワード管理ツールの存在と保管場所」を残す
- 1〜2年に1度の更新が前提。書きっぱなしは古い情報で混乱を招く
「いつかエンディングノート書かなきゃ」と思って買ったきり、ページが白いまま──そんな方は多いです。完璧主義になるとペンが止まり、結局「もしも」の時に家族が困ります。
この記事では、終活カウンセラーのあゆ先生と臨床心理士のケン先生に、52歳の読者が相談する形で、エンディングノートの書き方を10項目テンプレ・始め方の30分プラン・挫折しないコツまで解説します。

読者さん(52歳)エンディングノートに挑戦中
あゆ先生終活カウンセラー
ケン先生臨床心理士
第1章|エンディングノートとは?遺言書との決定的な違い
エンディングノートは、自分の人生の終末期に備えて大切な情報や思いを書き残すノートです。医療・介護の希望、財産・保険の情報、家族へのメッセージなど何でも自由に書けます。
最重要ポイントは「法的効力がない」こと。だからこそ自由に書けるし、書き直しも簡単。財産分配など法的拘束力が欲しい部分は別途、遺言書を作成します。
| エンディングノート | 遺言書 | |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし | あり |
| 形式 | 自由 | 厳格(自筆/公正証書/秘密証書) |
| 内容 | 何でも書ける | 財産分配・身分(認知など)に限定 |
| 訂正・更新 | いつでも自由 | 規定の方法が必要 |
| 費用 | 0〜2,000円 | 公正証書なら3〜10万円 |
| 主な役割 | 家族への「取扱説明書」 | 財産の「分け方の決定」 |
エンディングノートと遺言書、両方必要なんですか?片方だけじゃダメ?
役割が違うので両方が理想です。エンディングノートは「家族が困らないための取扱説明書」、遺言書は「財産分配の法的決定」。
でも一気に両方は大変なので、まずエンディングノートから。そこで自分の希望が整理できたら、財産分配が明確になった段階で遺言書を作るのが現実的な順番です。
第2章|エンディングノートに書くべき10項目

エンディングノートに書く内容に決まりはありませんが、遺族が一番困りやすい10項目を網羅すれば実用的な備えになります。
① 基本情報・個人情報
- 氏名・生年月日・血液型・本籍地
- 健康保険証・マイナンバーカードの保管場所
- かかりつけ医・持病・服用中の薬・アレルギー
- 緊急連絡先(家族・友人・ご近所)
② 資産・財産情報
- 銀行口座一覧(金融機関名・支店・口座番号・通帳の保管場所)
- 証券会社・株式・投資信託
- 不動産の情報(登記簿・所在地)
- 生命保険・損害保険(保険証券の保管場所)
- 年金手帳・受給状況
- ローン・借金の有無と残高(マイナス資産も必須)
③ デジタル資産・SNS情報
- メールアカウント(管理方法)
- SNSアカウント一覧と希望処理(削除/追悼アカウント化)
- サブスクリプション一覧と解約方法
- スマートフォン・PCのロック解除方法
- クラウドサービス(Google/Apple/Amazon)のID
ノート紛失時のリスクが高すぎます。代わりに「1Password等のパスワードマネージャーを使っており、マスターパスワードは○○に保管」と記載するか、別封の遺品書類にだけ書く方式に。詳しくはデジタル終活ガイドを参照。
④ 医療・介護の希望(ACP)
- 延命治療(人工呼吸器・胃ろう・心肺蘇生)の希望有無
- 終末期の療養場所(自宅・病院・ホスピス)
- 臓器提供・献体の意思
- 在宅介護 or 施設入所の希望
- 認知症になった場合の意思決定者
⑤ 葬儀・お墓・遺影の希望
- 葬儀の形式(一般葬・家族葬・直葬)
- 宗教・宗派・菩提寺
- お墓の希望(樹木葬・永代供養・散骨など)
- 遺影に使ってほしい写真の保管場所
- 訃報を知らせてほしい人のリスト
⑥ 大切な人へのメッセージ
配偶者・子ども・孫・友人それぞれへの感謝のメッセージ。形式は問わず、手紙・動画・音声でもOK。
⑦ ペット・コレクション・趣味用品
- ペットの引き受け先(名前・種類・食事・かかりつけ獣医)
- 続けてほしい/処分してほしいコレクション
- 大切にしてきた価値観・後世に伝えたいこと
⑧ 重要書類の保管場所
- 不動産登記簿・権利書
- 年金手帳・各種証書
- 遺言書の保管場所(自宅・法務局・公証役場)
⑨ 自分の歴史・思い出
- 生い立ち・学歴・職歴
- 結婚・出産・転居など人生の節目
- 好きな音楽・本・場所
⑩ 葬儀後の手続き連絡先リスト
- 勤務先・元勤務先
- 所属コミュニティ・サークル
- 頼んでいる士業(税理士・弁護士など)
10項目もあるんですか……。④の医療・介護の希望、特に延命治療のことを母に聞くのが本当に辛くて、聞けないんです。
その気持ち、よくわかります。「もし意識がなくなったら」という仮定の話は、特に親子だと辛いんです。コツは「他人の事例から入る」こと。
「最近ニュースで延命治療の話があって、私はもし自分がそうなったらこう思うんだけど、お母さんは?」のように自分から先に話すと、親も自分の意見を言いやすくなります。これは「自己開示の返報性」という心理現象で、相手の口を開かせる強力な方法です。
第3章|医療・介護の希望(ACP)の書き方
意識を失った時、家族は「本人はどうしたかったか」で苦しみます。エンディングノートに明確に書いておくだけで、家族の意思決定負担が劇的に減ります。
延命治療の意思表示の3類型
| 項目 | 選択肢 |
|---|---|
| 心肺蘇生(CPR) | 希望する/希望しない |
| 人工呼吸器 | 希望する/一時的なら希望/希望しない |
| 胃ろう・経管栄養 | 希望する/一時的なら希望/希望しない |
| 輸血 | 希望する/希望しない(宗教的理由含む) |
エンディングノートの希望を、医療現場で確実に伝えるためには「事前指示書(リビング・ウィル)」を別途作成するのが有効。日本尊厳死協会など専門機関のフォーマットを使うとさらに確実です。詳細はACP(人生会議)ガイドを参照。
第4章|葬儀・お墓・遺影の希望の書き方
葬儀の規模・形式、お墓の種類など、希望を残しておくと遺族の精神的・経済的負担が大きく減ります。
- 葬儀形式:一般葬/家族葬/直葬/自然葬
- 宗教:仏式(宗派)/神式/無宗教
- お墓:一般墓/樹木葬/永代供養/散骨/納骨堂
- 遺影写真:気に入った写真ファイルのパスを明記
関連: 葬儀費用の相場 / 樹木葬と永代供養の違い / 生前準備の遺影撮影
第5章|大切な人へのメッセージ|照れずに書く3つのコツ
多くの方が「最後に何を書けばいいかわからない」と止まる場所がここ。3つのコツがあります。
- 1人ずつ宛先を分ける:「家族へ」より「夫の○○へ」「娘の××へ」と個別に書く
- 「ありがとう」の具体例を添える:「特に〜の時に支えてくれて」など具体的シーンを
- 3行でいい:長文は重い。3行で十分、思いは伝わる
第6章|書く際の3つの注意点と保管方法
財産分配など強制力が必要な事項は遺言書を別途作成。エンディングノートだけだと相続トラブルを止められません。
家族が見つけられないと意味ゼロ。「仏壇の引き出し」「金庫」「冷蔵庫の上」など定番場所+家族への口頭共有を徹底。
1〜2年に1回見直し。誕生日や年末を「マイルストーン」に設定すると習慣化しやすい。
パスワードを書かないにしても、デジタル遺品の扱いが分からなくて。サブスクの自動引き落としとか、SNSとか……。
デジタル遺品はエンディングノートの中で一番見落とされる項目です。最低限これだけ書いてください。
①スマホのロック解除方法の保管場所(直接書かず手がかりだけ)、②使ってる主要サブスク3〜5個のリスト(Netflix・iCloudなど)、③消したいSNS/追悼に変えたいSNSの希望、④クラウドの家族写真の保管場所。これだけで遺族の「どうすれば」が劇的に減ります。
第7章|書き始められない人のための「30分プラン」
「完璧主義」がエンディングノート挫折の最大要因。最初の30分で「資産口座+緊急連絡先」だけ書けばOK。残りは月1ペースで埋めていきましょう。
30分プラン(今日からできる)
- 5分:通帳・キャッシュカードを全部出して銀行口座リスト化
- 5分:保険証券の保管場所メモ
- 10分:緊急連絡先5人を電話帳から書き写し
- 5分:かかりつけ医・常用薬の情報
- 5分:保管場所を家族に口頭共有
紙 vs アプリ、どちらがいい?
| 紙のノート | デジタルアプリ | |
|---|---|---|
| 更新のしやすさ | 手書き面倒 | ◎簡単 |
| 家族の見つけやすさ | ◎物理的に渡せる | パスワード共有が必要 |
| 情報量 | ○ | ◎大量に書ける |
| セキュリティ | 盗難リスク | ◎暗号化可能 |
| おすすめは | 50代以上で紙慣れ | 40〜60代で更新頻度高い人 |
まず死生観診断で、書く前の整理を
「何を書けばいいかわからない」のは、自分の死生観が整理されていないから。5分の診断で自分のタイプを知ると、エンディングノートに書きたいことが驚くほど明確になります。
死生観診断を試す(5分・無料)まとめ|「完璧」より「今日から少し」
エンディングノートは完璧主義の敵。10項目全部を一気に埋めようとして挫折する人がほとんどです。
正解は「今日30分、まず資産+緊急連絡先だけ」。残り9項目は月1ペースで埋めていけば1年で全項目完成。そして1〜2年に一度の更新を習慣化しましょう。
あなたが書いた一行は、もしもの時に家族を支える最大の贈り物になります。
よくある質問(FAQ)
Q. エンディングノートはどこで買えますか?
A. 書店・文具店・100円ショップで500〜2,000円程度。ゆいぽけのデジタルエンディングノートなら無料で始められ、スマホからいつでも更新できます。
Q. 何歳から書き始めるべきですか?
A. 法律上の年齢制限はなし。実用的には40〜50代がベスト。健康なうちに始めるほど内容が充実し、更新も習慣化しやすい。50代の終活チェックリストも参照。
Q. エンディングノートで相続手続きはできますか?
A. できません。法的効力がないため、相続には別途遺言書と戸籍謄本・遺産分割協議書が必要。詳細は遺言書作成ガイドを参照。
Q. パスワードはエンディングノートに書いていいですか?
A. 直接書くのは危険。パスワードマネージャーの存在と保管場所、または別封の遺品書類に書く方式が安全。デジタル終活ガイドに詳しい手順あり。
Q. 書いた内容を家族にいつ見せるべきですか?
A. 保管場所だけ口頭で共有するのがベスト。中身は本人が亡くなった後に家族が読みます。生前に中身を見せるかは個人の判断ですが、医療・介護の希望部分だけは早めに共有しておくと安心です。
Q. 1冊で家族全員分書いていいですか?
A. 1人1冊が原則。資産・希望が混ざるとトラブルの元です。夫婦であっても別々に書きましょう。
Q. 書いた後、何年で更新すべきですか?
A. 1〜2年に1回が目安。引越し・口座変更・家族構成変化があった時は即更新。誕生日や年末を「更新日」に決めると習慣化します。
Q. エンディングノートに法的効力がないなら、書く意味はありますか?
A. 絶大にあります。遺族が「本人はどうしたかったか」「契約や口座はどこにあるか」で悩む時間を劇的に減らせます。法的効力は遺言書で補完し、エンディングノートは「家族への取扱説明書」として位置づけてください。

