法律
2026年4月24日
更新: 2026年5月24日

成年後見制度完全ガイド|法定後見・任意後見の違い・費用・手続き・7つのデメリット

成年後見制度完全ガイド|法定後見・任意後見の違い・費用・手続き・7つのデメリット

成年後見制度を徹底解説。法定後見(後見・保佐・補助)と任意後見の違い、利用者25万人の現状、後見人ができること・できないこと、2〜4ヶ月の申立て手続き、月額2〜6万円の報酬、原則解任できない等の7つのデメリット、家族信託との比較まで網羅した完全ガイドです。

この記事のポイント

  • 成年後見制度は認知症・知的障害などで判断能力が不十分な人を法的に保護する制度
  • 2023年末で利用者は約25万人、需要に対してまだ少ない
  • 「法定後見(後見・保佐・補助)」と「任意後見」の2種類がある
  • 法定後見の申立費用は1〜2万円、後見人報酬は月額2〜6万円
  • いったん始めると原則として解任・終了できないなど7つのデメリット

成年後見制度とは?

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分になった人を、法律面・生活面で支援するための制度です。根拠は民法第7条以下、成年後見人等は財産管理と身上監護(生活・医療・介護契約の締結)を行います。

契約書類に向き合うイメージ
成年後見制度は本人の判断力が落ちてから、または落ちる前に備える制度です

制度が必要になる典型例

  • 認知症の親名義の不動産を売却したい
  • 本人の預金口座からお金を引き出せなくなった
  • 施設入所の契約を誰が代わりに結べばいいかわからない
  • 障害のある子どものために一生を守る仕組みを作りたい
  • 高額な契約(リフォーム・投資)をされるのを防ぎたい

法定後見と任意後見|2つのルート

法定後見任意後見
開始時期判断能力低下後判断能力低下に契約
後見人の選任家庭裁判所が選任本人が選任(公正証書で契約)
権限の範囲法律で画一的に決定契約で柔軟に設計可能
監督家裁または後見監督人任意後見監督人(必須)
報酬家裁が決定(月2〜6万円)契約で決定+監督人報酬

法定後見の3類型

後見(もっとも重度)

判断能力を欠く常況。日常の買い物も難しい。後見人に広範な代理権・取消権。本人の選挙権は停止されないが、不動産処分には家裁の許可が必要。

保佐(中等度)

判断能力が著しく不十分。借金・訴訟・相続など重要な法律行為に保佐人の同意が必要。代理権は個別に申立て必要。

補助(軽度)

判断能力が不十分。本人の同意が申立て要件。同意権・代理権の範囲を個別に決定。もっとも本人の自己決定権が残る。

利用状況の現状

最高裁判所事務総局の統計(令和5年)によれば、成年後見制度の利用者は約25万人。一方で、認知症高齢者は約600万人(2025年推計)と見込まれており、制度利用率は約4%にとどまっています。利用が伸び悩む背景に、コストの負担感、柔軟性の低さ、家族への不信感などがあります。

高齢者を支える手のイメージ
利用率わずか4%の現状。制度の良し悪しを把握して選択することが大切です

後見人ができること・できないこと

できること
  • 預貯金の管理・引き出し
  • 不動産の売買(家裁許可制)
  • 介護施設との契約
  • 医療費・施設費の支払い
  • 日常生活費の支出
  • 相続手続き・遺産分割協議
  • 税務申告・年金手続き
できないこと
  • 手術など医療同意(本人・家族のみ)
  • 結婚・離婚・養子縁組
  • 遺言書の作成
  • 延命治療の可否判断
  • 身柄監護(施設入所の強制)
  • 本人の死亡後の事務処理(別途死後事務委任契約が必要)

法定後見の申立て手続き

  1. 1
    申立書類の準備

    家庭裁判所サイトからダウンロード。医師の診断書・財産目録・戸籍謄本を揃える。

  2. 2
    家庭裁判所に申立て

    本人の住所地を管轄する家裁へ提出。申立費用は収入印紙800円+登記収入印紙2,600円+郵券。

  3. 3
    調査官面接・鑑定

    家裁調査官が本人・家族と面接。必要に応じて精神鑑定(費用5〜10万円)。

  4. 4
    審判・後見人選任

    家裁が後見開始を審判し、後見人を選任。2〜4ヶ月かかるのが通常。

  5. 5
    後見登記・業務開始

    審判確定後、後見登記(東京法務局)。後見人は財産目録を提出し、業務を始める。

必要書類

▼ 法定後見の申立て書類

  • 後見開始申立書(家裁所定)
  • 申立事情説明書・親族関係図
  • 財産目録・収支予定表
  • 本人の戸籍謄本・住民票
  • 後見人候補者の戸籍・住民票・身分証
  • 医師の診断書(成年後見用)
  • 成年後見登記事項証明書(「後見等の登記されていないことの証明書」)
  • 本人の健康保険証・預貯金通帳の写し

費用の内訳

項目金額備考
申立費用(印紙・郵券)約1万円収入印紙800円+登記印紙2,600円+郵券
医師の診断書5,000〜10,000円医療機関による
鑑定費用(必要な場合)5〜10万円家裁が判断
司法書士・弁護士の申立代行10〜20万円任意
後見人報酬(月額)2〜6万円家裁が本人の資産額に応じて決定
後見監督人報酬(月額)1〜3万円家裁が必要と判断した場合
報酬は本人の財産から支払われる
後見人への報酬は、本人の預金等から家裁の決定に基づき支払われます。本人の資産が少ない場合は、自治体の「成年後見制度利用支援事業」で助成を受けられることがあります。

任意後見契約の結び方

任意後見は判断能力があるうちに、将来の後見人を自分で選んで契約しておく仕組みです。公正証書での契約が必須です。

3つの契約タイプ

① 移行型

元気なうち→「財産管理委任契約」、判断力低下後→「任意後見」に自動移行。最もよく使われる

② 即効型

契約と同時に任意後見監督人を選任し、すぐに任意後見を発動。判断力が既に低下している場合向け。

③ 将来型

判断力低下時に監督人を選任して発動。元気な期間は契約のみ存在する状態。

7つのデメリット・注意点

デメリット①:原則として途中でやめられない
後見開始審判が確定すると、本人が回復するか死亡するまで後見は継続。家族が「思ったより煩雑」で取り下げることはできません。
デメリット②:柔軟な財産活用ができない
積極的な資産運用(投資・贈与・リフォーム投資)は原則不可。本人の財産を「守る」ことが最優先されるため、相続税対策もしにくい。
デメリット③:家族が後見人になれないケースが多い
近年は第三者(弁護士・司法書士・社会福祉士)が選ばれる比率が約8割。家族が希望しても家裁が認めない場合あり。
デメリット④:月額報酬が長期負担に
10年続けば総額240〜720万円になることも。本人の資産が削られ、相続人の手取りが減る。
デメリット⑤:生前贈与・相続対策が止まる
本人から子・孫への贈与は原則不可。相続税対策の選択肢が大きく狭まる。
デメリット⑥:資格制限
後見開始審判を受けた人は一部職業資格(医師・弁護士・公務員など)が失効。保佐・補助では制限なし。
デメリット⑦:手続きが長い
申立から審判まで2〜4ヶ月。緊急の不動産売却には間に合わないことも。

家族信託との比較

近年、成年後見の代替案として家族信託が注目されています。両者の違いをまとめます。

成年後見家族信託
開始時期判断力低下後契約時から(元気なうち)
管理者家裁が選任本人が選任
資産運用原則禁止柔軟に可能
相続対策制限あり実質的に可能
身上監護可能不可(別途必要)
家裁関与ありなし
初期費用1〜20万円30〜100万円
継続コスト月2〜6万円原則なし

家族信託は資産運用・相続対策には優れますが、身上監護(施設契約・医療契約など)はできないため、任意後見+家族信託の併用が理想的です。詳しくは家族信託のメリット・費用ガイドもご参照ください。

まとめ|「使う前提」より「備える発想」

成年後見制度は最終手段の安全装置ですが、始めると引き返せない重さがあります。判断力があるうちに任意後見契約・家族信託・遺言書の3点セットで備えるのが、柔軟性・コスト・安心のバランスがもっとも良い選択です。

ゆいぽけのエンディングノートでは、かかりつけ医・判断力が落ちたときの希望・信頼できる家族連絡先を事前に整理できます。認知症発症前の「まだ元気な今」が、準備のラストチャンスです。認知症になる前にやっておくこともあわせて確認してください。

おひとりさま・認知症対策シリーズ

もっと深く知る

身寄りなし・認知症リスクへの備え方

おひとりさま・認知症対策のトピックページを開く