「認知症になってからでは遅い」——終活の中でも、認知症対策は特に早めの準備が不可欠です。判断能力が低下すると、遺言書の作成・銀行口座の手続き・任意後見契約など、重要な法的手続きが一切できなくなります。この記事では、認知症になる前に必ず済ませておくべき7つの項目を具体的に解説します。
なぜ認知症になる前の準備が重要なのか
2023年に施行された「認知症基本法」でも示されたように、日本の認知症患者数は2025年に約700万人(65歳以上の約5人に1人)に達する見込みです。問題は、認知症の初期症状は本人が気づきにくいこと。気づいた時には判断能力が不十分とみなされ、法的な手続きができなくなっているケースが多発しています。
遺言書の作成・変更、任意後見契約の締結、不動産の売買、銀行口座の解約・変更、保険の新規加入・解約、贈与契約——これらはすべて、認知症により「意思能力なし」と判断されると法的に無効になります。
準備①:任意後見契約を結ぶ
認知症対策の最重要手続きが任意後見契約です。判断能力があるうちに「もしも認知症になったとき、代わりに財産管理・契約を行う人(任意後見人)」を指定しておく制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約相手 | 信頼できる家族・知人・弁護士・司法書士 |
| 作成場所 | 公証役場(公正証書による) |
| 費用 | 公証人手数料:約1.1〜1.7万円+登記費用 |
| 発動条件 | 家庭裁判所が任意後見監督人を選任したとき |
| 委任できる内容 | 財産管理・医療同意・施設入所契約など |
家族信託は財産管理に特化していますが、身上監護(介護施設の契約など)はできません。任意後見は財産管理と身上監護の両方をカバーします。不動産・事業承継がある場合は家族信託との組み合わせが有効です。
準備②:家族信託で財産を守る
家族信託とは、自分の財産(不動産・預金など)を信頼できる家族に「管理・運用・処分」する権限を移転しておく仕組みです。認知症になり判断能力が低下しても、受託者(家族)が財産を適切に管理し続けられます。
家族信託が特に有効なケース
- 賃貸不動産を持っていて、認知症後も収益管理を続けたい
- 実家を売却して施設入所費用に充てる可能性がある
- 障害のある子どもの将来を守りたい(受益者連続型信託)
- 相続対策と認知症対策を同時に行いたい
準備③:遺言書を作成・最新化する
認知症が進行すると遺言書の作成が困難または無効になります。現時点での意思を遺言書に残しておくことが重要です。特に注意したいのが「遺言能力」の問題です。軽度認知症でも遺言書を作成できる場合がありますが、後から遺族間で有効性を巡るトラブルが起きやすいです。
軽度認知症の段階でも公証人・医師の確認を経た公正証書遺言なら有効性が認められやすいです。診断を受けたらすぐに公証役場に相談しましょう。
準備④:銀行口座・資産の整理
認知症と診断されると、金融機関が口座を「凍結」する可能性があります。凍結されると家族であっても引き出しができなくなり、介護費・生活費の支払いが困難になります。事前にできる対策:
- 複数に分散した口座を整理・集約する
- 家族が把握しやすい形で一覧化する(エンディングノートに記録)
- 生活費用の口座と資産用の口座を分けておく
- 家族名義の口座への定期的な移動を検討する(贈与税に注意)
- 代理人カードや家族口座の登録(銀行によって対応が異なる)
準備⑤:かかりつけ医・ケアマネジャーとの関係構築
認知症の早期発見には定期的なかかりつけ医の受診が不可欠です。また、ケアマネジャー(介護支援専門員)との関係を事前に構築しておくことで、認知症後のケアプラン作成がスムーズになります。
かかりつけ医に伝えておくこと
- 服用中の薬・アレルギー・既往歴
- 緊急連絡先(家族・後見人候補)
- 延命治療・介護方針の希望
- 任意後見契約を締結していること・後見人の連絡先
準備⑥:エンディングノートに意思を記録する
認知症が進行すると自分の希望を言葉で伝えられなくなります。今の意思をエンディングノートに具体的に書き残しておくことで、家族が「本人の意思」に基づいてケアや手続きを進められます。
・延命治療・人工栄養・胃ろうの希望
・在宅介護 or 施設入所の希望(施設の種類・エリア)
・認知症になった場合の毎日の生活で大切にしたいこと
・財産管理を任せたい人の名前と連絡先
・葬儀・埋葬の希望
準備⑦:家族との「もしも会議」を開く
法的な準備と同じくらい重要なのが、家族との事前の話し合いです。「認知症になったらどうしてほしいか」を家族が知っているだけで、いざというときの混乱が大幅に軽減されます。
- 家族が集まるタイミングで「もしも会議」を設定する
- 「施設か在宅か」「誰が中心になるか」を話し合う
- 任意後見人の候補を家族で確認・合意する
- 財産の概要を家族に共有する(詳細でなくてよい)
- エンディングノートの保管場所を伝える
認知症になる前の終活チェックリスト
- □ 任意後見契約を締結した
- □ 不動産・資産がある場合は家族信託を検討した
- □ 遺言書(公正証書)を作成・最新化した
- □ 銀行口座・資産を整理・一覧化した
- □ かかりつけ医に緊急連絡先・希望を伝えた
- □ エンディングノートに医療・介護希望を記録した
- □ 家族と「もしも会議」を行った
よくある質問(FAQ)
Q:軽度認知症と診断されても遺言書は書けますか?
A:軽度認知症であれば「遺言能力がある」と判断される場合があります。ただし後の無効トラブルを防ぐため、公証人・医師の立会いのある公正証書遺言を強く推奨します。診断直後に早急に対応しましょう。
Q:任意後見人は家族以外でも大丈夫ですか?
A:弁護士・司法書士・NPO法人なども任意後見人になれます。おひとりさまや家族に頼みにくい事情がある場合は専門家への依頼が現実的です。費用は月2〜5万円程度が相場です。
Q:銀行口座が凍結されたらどうなりますか?
A:任意後見制度が発動していれば任意後見人が代わりに手続きできます。発動前の場合は法定後見(法定後見制度)を家庭裁判所に申立てる必要があり、審判まで数ヶ月かかります。事前の準備が重要な理由がここにあります。
まずエンディングノートに医療・介護の希望を書き、家族に存在を伝えましょう。その後、地域の弁護士・司法書士会の無料相談で任意後見契約について聞いてみることをおすすめします。ゆいぽけのエンディングノート機能で今すぐ意思の記録を始められます。
